
資材の仕入れに困ったときに頼れる建設業向けファクタリングとは?
2025年現在、建設資材価格の高騰や人件費の上昇が続く中、現場を担当している工務店にとって、資金繰りの問題は重要度の高い経営課題です。特に、材料費の支払いは避けては通れない支出でありながら、売上金の入金は工事完了後というタイムラグが生じます。手元資金が十分でない工務店であれば、支払いを間に合わせるために急ぎで資金調達しなければならないケースも多いです。
そんな時、急ぎで現金を調達できる方法として注目されているのが「ファクタリング」です。これは、売掛債権を活用して即日で資金を手にすることができる、今注目の資金調達方法です。特に建設業界では業界特性とファクタリングの相性が良いため、建設業向けファクタリングも登場しています。
今回は、資材の仕入れに困ったときに頼れる建設業向けファクタリングについてご紹介します。
【建設業界特有の資金繰りの難しさとは】
建設業界は業界の特性上、特に資金繰りが難しいといわれています。どのような点が資金繰りを難しくさせているのか、そのポイントをご紹介します。
<資材価格の高騰が資金繰りを圧迫>
2023年以降、木材・鉄骨・コンクリートなどの主要資材の価格は上昇傾向が続いています。とくに海外からの輸入材は円安や物流費の高騰により価格が安定せず、仕入れのたびにコストが膨らむという問題が発生。月ごとの材料費は読みにくく、キャッシュフロー計画も困難になっています。
<材料費などの支出は工事開始前から発生>
一方、支払いは工事の前から始まります。材料の仕入れ、外注業者への前払金、職人の人件費など、現場を動かすには先立つ資金が不可欠です。売上が確定する前にコストが発生するため、工事が増えるほど支出も増し、資金繰りがひっ迫するという前倒しの構造になっているのです。
<現金化までのタイムラグが大きい>
建設業では、基本的に報酬は仕事の完成後に支払われます。それに加えて工事が完了してから売上が現金化されるまで1〜3ヶ月以上かかるのが一般的です。これは、請求書発行後に検収・承認を経て入金が行われるという業界特有のプロセスが存在するためです。中には、公共工事などで半年以上支払いが遅れるケースもあり、完工=入金ではないという構造が、慢性的な資金不足を招く一因となっています。
さらに近年では働き方改革などの影響で現場の工期が伸び、請求書の発行も後ろ倒しになる傾向があります。
<複数現場の並行進行が負担に>
現場を同時に複数動かすのが当たり前の建設業では、それぞれの着工準備に伴って同時多発的に資金が必要になります。受注が増えても、売掛金が現金になる前に新たな工事が始まれば、資金不足に拍車がかかります。特に繁忙期には資材価格の変動や工期の重なり、急な人員手配などで支出が大きく膨らむため、少しの入金遅れが資金ショートの引き金になる可能性もあります。
<売掛金のリスク(遅延・未回収・信用不安)>
帳簿上では売り上げが上がっているように見えても、現実には入金が遅れることや未回収になるリスクも存在します。元請企業の都合や経営不振、検収の遅れなどが原因で、予定していたキャッシュが入らず、結果的に材料費の支払いに影響を及ぼすこともあります。こうした事態が常態化すると、利益は出ているのに倒産してしまう「黒字倒産」の危険性が高まります。
2023年に導入されたインボイス制度により、個人事業主や一人親方との取引コストが増加しており、元請け側の経費精算や支払い管理が複雑化しています。結果として、請求の承認や支払い処理に時間がかかり、下請けの資金繰りにさらなる遅れを招いています。
<急ぎの資金調達に銀行融資が使えない>
資金が不足した際、銀行からの融資を検討する事業者も多いですが、実際には赤字決算や債務超過で審査に通らないケースが多く見られます。さらに、申請から実行まで数週間以上かかることが一般的で、急ぎの支払いには間に合わないのが現実です。
特に小規模事業者の場合、担保や保証人の確保が難しく、銀行からの資金調達に頼るのはハードルが高いといえます。
【建設業向けファクタリングとは】
ファクタリングは、請求済みの売掛金をファクタリング会社に買い取ってもらうことで、本来入金される前に資金化できる仕組みです。たとえば、2ヶ月後に入金予定の300万円の請求書に対して、最短即日で270万円程度の現金を手にすることができます(手数料は数%〜10%が相場)。
2025年現在、建設業界に特化したファクタリングサービスが増加しており、業界特有の課題に対応した柔軟な仕組みが提供されています。
<即日対応・オンライン完結型が主流に>
2025年現在、建設業界においてもデジタル化の波が加速しており、ファクタリング業務にもその影響が顕著に表れています。かつては対面での面談や、紙の契約書類の提出が必須だったファクタリングですが、現在はオンライン完結型のサービスが急増しています。
これにより、現場に出ていても移動中や休憩時間にスマホだけで資金調達の申請が可能になりました。中には申請から最短2時間以内に入金される超スピード対応のサービスも登場しています。
また、AIによる書類チェックや自動審査を活用している会社もあり、従来のファクタリングよりもさらに早く、利用しやすくなっています。
<建設業に特化した審査基準がある>
一般的なファクタリングでは、売掛先の信用力や過去の取引履歴が重視されますが、建設業界特有の契約構造や支払いスケジュールを理解した審査体制を整えている建設業向けファクタリングがあります。
建設業向けのファクタリング会社の審査基準には、以下のようなものがあります。
・工事請負契約書や注文書から工期や完成予定時期を判断
・請求書に加え、出来高報告書・検査済証なども評価材料に
・元請企業との過去の支払い遅延や実績をスコア化して審査に反映
また、公共工事に関する売掛金(いわゆる「債権譲渡禁止特約付きの案件」)も、一定条件を満たせば資金化できるケースが増えてきています。
<小口対応や継続利用にも対応>
従来のファクタリングは「まとまった売掛金がある場合に一度だけ利用する」というイメージが強くありましたが、最近では日常的なキャッシュフローの補助として活用するケースが増えています。
特に建設業では、小規模な工事現場が複数並行して稼働しているのが一般的です。それぞれの現場では、月あたり20万〜30万円規模の請求書が複数発生し、定期的に資金が必要になります。さらに、現場の進捗や天候、元請けの要望変更などに応じて、急な材料の手配や外注先への前払いが必要になるケースも少なくなく、想定外の出費が資金繰りに大きな影響を与えているのです。
こうした背景から、少額(10万円〜50万円)でも利用可能な「小口ファクタリング」や、毎月の請求書を継続的に買い取ってもらえる「定額利用プラン」が登場しています。
継続利用には審査が1回だけで済むプランの利用や、売掛先1社に対して毎月自動でファクタリングが実行される設定も可能なため、手間が大きく軽減されます。資金繰りに振り回されず、現場対応に集中できることは大きなメリットです。
また、費用を毎月の固定費として経費化できるようなサービス設計がされているため、税務上の処理も簡単で、資金繰り表にも組み込みやすいという利点もあります。
<建設業特有の課題にも対応する付加価値サービス>
さらに、建設業向けファクタリングサービスでは以下のような+αのサービスを用意している企業も出てきています。以下に一例をご紹介します。
・工事管理サポート
ファクタリング利用企業向けに、工期管理・請求書発行を支援するクラウドシステムを無償提供
・与信情報の提供
取引先の信用調査結果を開示してくれるサービスもあり、元請けリスクを事前に把握可能
・資材卸業者との提携
ファクタリング会社が資材卸業者と連携し、「支払いが間に合わない場合はファクタリング利用前提で材料を先行納品できる仕組み」を導入
【ファクタリングを活用するメリット】
建設業における資金繰り対策として注目されているファクタリングは、従来の融資とは異なる特長を持ち、建設業界で現場を預かる工務店等にとって利用しやすい資金調達手段となっています。主なメリットは以下のとおりです。
まず、資金化までのスピードが非常に早い点が挙げられます。必要書類が少なく、審査プロセスもシンプルなため、条件が整えば最短で即日入金が可能です。急な支払いが発生した場合や、資金繰りのギャップをすぐに埋めたい場面で大きな助けとなります。さらに、ファクタリングは審査の通過ハードルが比較的低いのも特長です。融資と異なり、利用企業の財務状況よりも売掛先の信用力を重視して審査が行われるため、たとえ赤字決算や債務超過であっても利用できる可能性があります。
また、信用情報に影響を与えないのも大きな安心材料です。ファクタリングは借入ではなく売掛金の売却であるため、信用情報機関に履歴が登録されることはなく、将来的な融資やリース契約への悪影響を心配する必要がありません。加えて、財務上の負担が軽いという点も重要です。ファクタリングによる資金調達は負債ではないため、バランスシートに借入金として記載されることがなく、財務体質を悪化させずに資金を確保することができます。
このように、ファクタリングはスピーディで柔軟、かつ経営への負担が少ない手段として、建設業をはじめとする資金繰りに課題を抱える事業者にとって、有力な選択肢となっています。
【まとめ】
資材高騰・工期延長・制度変更など変化の激しい建設業界において、資金繰りを安定させることは重要な経営課題です。
材料費の支払いに悩む工務店にとって、ファクタリングは「現金が入るまでの不安定な期間を乗り越えるための手段」として非常に有効です。しかも借入ではないため、将来的な負担を背負うこともありません。
また、苦しい時に一時的に利用するサービスとしてだけではなく日常的な資金運用ツールとしての活用されてきており、事業規模に関わらず、今や資金調達の選択肢のひとつとして、建設業界全体で認知が広がりつつあります。
資材の仕入れに困ったら、ファクタリングを検討することをおすすめします。最短即日で現金が得られる手段があることで、材料の仕入れが遅れることなく、職人の稼働も止めずに済みます。
安定した資金繰りは、取引先からの信頼とリピートにつながるでしょう。